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2025/03/26

コラム

ITコラム ー 業務アプリケーション・IT投資を成功させるための基本ステップ ステップ1

業務アプリケーションIT投資を成功させるための基本ステップ

―業務アプリケーションの取り組み体制と投資プロセスに鍵がある―

IT投資を成功させる取り組みを5つのステップでご紹介させて頂く全6回のITコラム。

日々「IT投資管理」「業務プロセス標準化」「業務アプリの断捨離」などを意識する方だけでなく、技術職や営業職に関わる方にも幅広く知識の一つして頂ければ幸いです。

本日はその2回目、今回は最初のステップを解説したいと思います。

コラム著者紹介

菅宮徳也

大手電気メーカでIT関連の経験を積み2024年7月よりベストスキップ株式会社にてシニアITコンサルタントとして従事。

 ✓ 東南アジア向けメインフレーム営業・事業企画

 ✓ 金融機関向けITシステム活用研究・コンサルティング

 ✓  金融機関向けシステムインテグレーション事業企画

 ✓  米国ITシェアードサービス拠点設立・運営

 ✓  グループIT・セキュリティガバナンス

 ✓  グループ標準アプリ開発・運用

 ✓  鉄道車両・信号システム事業部門(本社は欧州)の国内CIO

ステップ1:状況を正しく把握する(課題を知る)

(ア)  IT 支出の実態を把握する

 ① IT支出の実態を正しく把握して組織内で共有することが最初のステップになります。これは案外難しいものです。どの範囲の数字なのか人によって認識に相違が発生しやすいからです。

 ② この認識の相違を防止するためにはIT支出を3つの観点で定義して組織内で共通理解を形成する必要があります。

  ✓ 観点1:支払ルート別

  支払元:IT組織が支払う支出のほかにユーザ部門が支払うIT支出も存在します。

  支払先:支払先も社内のIT組織だったり社外のITベンダーだったり社内業務主管元などもあります。

  どの支払いをIT支出の範囲とするのか、または範囲外とするのかを決めて関係者で共通の理解を形成します。例えば業務部門がベンダーに直接支払うものはシャドウITとして除外するか、IT支出に含めるのかといったことです。

  ✓ 観点2:ITライフサイクル別

  稼働開始にいたるまでの費用は「投資」と位置付け資産性のある支出(Aゾーン)資産性のない支出(Bゾーン)に大別します。

  稼働後の費用は「運用費用」であり資産性のない支出(Cゾーン)として位置付けます。

  IT支出は必ず上記3つのゾーンのいずれかに相当することになります。支出額を集計する場合にどのゾーンに属するのか明確にすると議論の軸がぶれなくなってかみ合ってきます。

  ✓ 観点3:費目別

  償却費

  観点2でAゾーンに分類される資産性支出(CAPEX)は投資を実行した結果、稼働後には償却費(OPEX)として(Cゾーン)に現れます。

  そのため、この二つの数字を合計してしまうとダブルカウントとなってしまうので注意が必要となります。

  上記を考慮するとIT支出合計値を把握する方法は以下のように二通りあり、どちらを採用するか決めます。

  ・   キャッシュアウトとして把握 : Aゾーン+Bゾーン+Cゾーン(ただし償却費を除く)

  ・   損益計算書上の費用として把握 : Bゾーン+Cゾーン(償却費を含む)

  ちなみに一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS :Japan Users Association of Information Systems) が毎年実施している企業IT動向調査では前者(キャッシュアウトとして把握したIT支出)を採用しています。

  人件費

  社員がAゾーンの仕事に従事した場合(資産を作る開発業務)投入時間分の人件費は、資産化されます。

  そのため人件費全体から資産化される分を差し引いてダブルカウントにならないような工夫が必要となってきます。

(イ)  保有アプリの状況をシステム台帳上で整理します。以下の情報は最低限ほしいところになってきます。

① 稼働後経過年数

② 使用ユーザ数

③ 簿価・運用費用

④ ビジネス戦略との関係性(スコア化)